成城大学

School

2021年秋にオープンバッジの発行を始めた成城大学。その後、学内の多くの部門でオープンバッジが発行されるようになっています。オープンバッジの最初の導入に関わった成城大学データサイエンス教育研究センターのセンター長、小宮路雅博教授に話を伺いました。

文系学生こそデータサイエンスを学ぼう!

https://www.seijo.ac.jp/
小田急線「成城学園前」駅の駅名の由来ともなっている「学校法人成城学園」。成城幼稚園から初等学校、中学校・高等学校、成城大学・同大学院までを擁する総合学園で、東京都世田谷の緑豊かな環境のもと児童・生徒・学生の個性を尊重し、自らの関心に従って学ぶさまざまな機会を提供しています。

なかでも、人文・社会系の4学部からなる成城大学では、全国の大学に先駆けて2015年からデータサイエンス科目群6科目12単位を開講し、全ての学部生向けにデータサイエンス教育を提供してきました。データサイエンス科目群の管轄部門は「成城大学データサイエンス教育研究センター」で、現在は「文系学生こそデータサイエンスを学ぼう!」をキャッチフレーズに16科目32単位のデータサイエンス科目群が提供され、数多くの学部生がデータサイエンスを学んでいます。 データサイエンス教育研究センターでは、以前からデータサイエンス科目群のうち所定の科目・単位を修得した学生に履修証明(データサイエンス・ディプロマ)を発行してきました。2021年秋からは、この履修証明についてデジタル認定証とともにオープンバッジを発行するようになっています。これは成城大学内では先行的な発行でしたが、現在では学内の多くの部門から多様なオープンバッジ発行されるようになりました。

「あらゆる学び」を多部門で認定する

成城大学では、4つの学部の他に、学部共通科目群を提供するセンターが複数設置されています。オープンバッジは、データサイエンス教育研究センターを皮切りに、「やれるところからやってみましょう」と各部門で発行IDを持ち、まずは各部門が自由にデザインし発行してみて、自律的・分散的に全学に広がっていくことを目指しています。
バッジの発行対象も、「なるべくあれこれ発行しましょう」との考えのもと、副専攻やコース修了証に加え、表彰、参加、役割といった広い意味でのあらゆる学びを、オープンバッジでデジタル記録し、色とりどりのバッジをウォレットに溜めて、学生達が卒業していくという姿を構想しています。 学内の他部門への展開にあたっては、学内先行部門としてデータサイエンス教育研究センターと学長室が中心になり、認定証や修了証を出している部門や学部横断的で新しい領域をミッションにしている部門への声がけから始めました。データサイエンス教育研究センターで発行したバッジを見せながら、「こんなのを発行しています。やってみませんか。」と具体的な説明がなされていきました。教職員向け学内セミナーもデータサイエンス教育研究センターと学長室共催で開催され、バッジの持つ機能や使われ方、発行の手順を説明して、セミナーの参加者に参加バッジを発行し、バッジの受領を体験してもらいました。この学内セミナーがきっかけで発行を開始した部門もあり、学内のあちこちで出始めれば、うちの部門もそろそろ出そうかと波及していく流れを想定されているそうです。
発行の例としては、たとえば、成城大学教育イノベーションセンターの「ピアサポーター」の役割についてのバッジの発行が挙げられます。「ピアサポーター」は、履修方法やレポートの書き方など学習に関する悩みに答えたり、時間割の組み方に不安を感じる新入生の相談にのるなど、学生同士が助け合い学び合うサポーター制度です。直近では、全国の同様の制度を持つ大学のサポーター達が集まるイベント「Supporters' Forum 2022」が成城大学で開催され、参加証バッジのデザインコンテストが行われて、グランプリに輝いたデザインのバッジが2022年秋に発行されています。この他、国際センターからは留学証明のオープンバッジ、キャリアセンターからは「就業力育成プログラム」修了証のオープンバッジなど、学内での発行が次々と広がってきています。

発行1年が経って認識される課題

成城大学では学生にバッジを授与する際に、「バッジの発行を希望しない場合は申し出て下さい」と事前に確認をしています。今のところ、希望しない・不要と言う学生はいませんが、「オープンバッジをもらえるの嬉しい!」と言うわりには、ウォレットを作成せず、受領しない学生も一定数いることが課題として認識されています。
受け取らない理由として挙がったのは、「ウォレットを作るのが、めんどう」ということです。興味があるのに受け取らないのは、現状では、自分のまわりでバッジを持っている人がおらず、見たことも聞いたこともないので、まあいいや、めんどうというのが先に立ってしまうようです。
「学生の間で、みんないろいろなバッジを持っているよ、となるように、学内でオープンバッジをもっと普及させたい。こんなバッジももらえるの?とあちこちから集める楽しさを感じてほしいし、卒業するときに誰もがそれなりの数を持っていて、皆さんのウォレットを見てみましょう。皆さんの4年間の頑張りが、オープンバッジの形でこんなにウォレットにたまっていますよ、と言いたい。」と小宮路センター長はおっしゃいます。現状、オープンバッジがもらえるのもあって、各種の活動、例えば、データサイエンス・ワークショップに参加するという学生も出てきていますが、就職活動などでオープンバッジを活用したという情報はまだ入ってきていません。産業界からも、オープンバッジでの自己アピールに注目しているなど発信してもらえれば、学生はもっと関心を持って、オープンバッジを取得するのではないかと考えられます。

これからの目指す姿

成城大学では、例えば、4月に新入生が全員出席するキャリアガイダンスなどで参加バッジを発行するなどして、新入生全員が一斉にウォレットを作り、あとはためていくだけになるようにする仕組みを検討しています。
「新入生が最初に受領するバッジは、この大学に入ったと感じられるような格式あるデザインが良いです。これから大学生活が始まります。いろいろな学びや経験を積み重ねて行きましょう。オープンバッジを得られる機会もたくさん用意してあります。今後は、オープンバッジは就職活動でも活用できるようになっていくでしょうと説明されると、オープンバッジに対するモチベーションも上がるでしょう。」
「例えば、さまざまなサポーター活動。留学生のバディになったり、ピアサポーターとして新入生の面倒を見てあげたり、関連する学内イベントを企画したり。これらすべて広い意味での学びになります。人のために時間を割き、工夫をして取り組んだことを大学がきちんと見てあげる。学生の皆さんの取り組みに対して、単にやりっぱなし、はい、お疲れさまではなく、きちんと認定してあげて、デジタル的に記録していける仕組みをつくることが大切。」と小宮路センター長は強調されていました。色とりどりのバッジが並んでいるウォレットから、その学生の多彩な活動や人柄がきっと見えてくるはずです。
分散・自律型の発行体制も、各部門が判断して、自由にデザインして自由に発行するのが成城大学らしい実践の型なのかもしれません。「もしも厳格にデザイン・コントロールされた同じようなバッジが並んだら、区別もしにくいし、保有者の個性が浮き出てこない。たとえ教職員の手作り感あふれるバッジであっても価値がある。いろいろなデザインのバッジを見ながら、これはあのときのイベントだな、大変だったな、でも面白かったな、そう言えば、誰それさんとあの時に一緒になって友達になったな、等と思い出せればそれでいい。ここで学び、経験し、生きてきたことをいろいろな面で大学が残してくれて、いつでもウォレットで振り返ることができるのが良いのです。」と小宮路センター長は語ってくださいました。
また、発行システムを共同運営していると、他部門が発行しているバッジのデザインやメタデータを読むことができます。お互いの発行したバッジをみているうちに、全体が統制されていくときもくるはずです。成城大学では、まずは各所からあれこれ同時多発で発行していくところから取り掛かり、オープンバッジの学内普及が図られています。

個性あふれるウォレットを武器のひとつに

早期から、オープンバッジの普及を応援してくださっている成城大学データサイエンス教育研究センターの小宮路先生。オープンバッジを発行してくれそうな学内他部門の扉を次々とご自身で開いておられます。成城大学がこれまで発行してきたバッジ一覧画面を拝見すると、さまざまな色やデザインのバッジが数多く並び、学生を応援している教職員の皆さんのあたたかい想いが伝わってきます。もしも、選りすぐったバッジを限定的に発行するだけですと、周りで誰も持っていない/知らないままとか、誰々は持っている/持ってないと単純な相互比較になってしまいます。数多く発行して誰もがさまざまなオープンバッジを持っていれば、「私はこれは持っていないけれど、こっちは持っている」とそれぞれの個性が出てきます。自ら学びの機会を獲得し、人との関係を大切に繋がり成長し合う、成城大学らしい学びの履歴がオープンバッジで描きだされていくのが楽しみです。個性あふれるウォレットが、就職活動や卒業生の社会人生活の中で、武器のひとつになることを心から願っております。

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